阿鼻叫喚

 

「阿鼻叫喚の様相を呈する」といえば、関東大震災や原爆投下後の広島市の記録映画に見ることが出来る。


阿鼻とは阿鼻地獄のことを意味し、梵語のアビチーの音写語で、無間地獄訳される。


この地獄に堕ちた者は、絶え間なく苦しみを受けるところから無間地獄とも呼ばれ、数ある地獄のなかでも最も苦しい地獄といわれる。


この地獄に堕ちる者は、父、母、阿羅漢(世の供養を受ける資格をもった修行者)を殺した者、仏の身体を傷つけた者、教団の和合を破壊した者となっている。父、母を殺すなどということは、古今東西、とうてい許されるべきことではないことがわかる。


叫喚は叫喚地獄を意味するが、この地獄に堕ちると、苦しさのあまり泣き叫ぶところから、叫喚地獄と名付けられたものである。この地獄に堕ちる人は、人を殺した者、盗みをした者、酒を飲んだもの(ことによるとたいていの人はこれにひっかかる)、邪なセックスをした者ということで、阿鼻地獄に比べるとかなり庶民的というか、身近な地獄になっている。しかし、ここに堕ちると、熱湯たぎる大釜のなかに投げ込まれ、猛火の鉄室のなかに入れられるということだから、ただごとではない。


阿鼻地獄も叫喚地獄も八熱地獄のなかにある。「あたた地獄」や「あはは地獄」は八寒地獄である。八寒地獄の記述はまことにさらりとしているのに比べると、熱い地獄の記述は強烈である。


夏のインドは、夜中でも四十度を越す暑さというから、経典の編者は、暑さというものには、相当頭に来ていたのだということが、容易に想像出来る。